(1999.10.6)東海村核燃料施設での臨界事故について
声明
東海村核燃料施設での臨界事故について
9月30日午前10時半頃、茨城県東海村の核燃料製造会社「ジェー・シー・オー(JCO)」で、核燃料用ウランで核分裂反応が進行する臨界事故が発生し、放射性物質が地域に放出された。この事故で急性放射性傷害を起こした重症の作業員3人を含む49人が被爆し、住民約31万人が屋内待避するなど最悪のものとなって、世界にも衝撃を与えた。
今回の事故は「ジェー・シー・オー」がウラン溶液の製造過程で、原子炉規制法に違反した裏マニュアルを日常的に用い、さらに実際の作業ではこのマニュアルをも逸脱していたことから起きたと報道されている。
また、事故を起こした工場では、核分裂反応を止めるためのホウ素投入装置や核分裂によって放出される中性子を測定する機器もなく、作業の遠隔装置もないなど、臨界事故が発生した際、それを制御・抑制するためのシステムも存在していなかった。
しかし、この「ジェー・シー・オー」に対し、政府は操業開始の許可を与える際には「臨界事故の考慮を必要なし」とし、7年ものあいだまったく検査を行わず、重大な危険性を有する核燃料施設の安全確保を企業任せにしてきた。今回の事故でも第一にこうした政府・科学技術庁の監督責任が問われなければならない。このように今回の事故は、原子力関連技術の未熟さと、安全対策の欠如や不備のまま突き進んでいるわが国原子力政策の危うさを重ねて内外に示したものと言える。
われわれ医師・歯科医師・医学者は、住民の生命と健康を守る立場から、今回の事故原因の徹底究明と責任の明確化、被害者と住民の万全の保障を要求する。また、安全性が保障されないままの原子力の利用を抜本的に見直し、問題のあるものは即時に運転、稼働を中止するとともに、すべての事実とデータを公開するよう求めるものである。
1999年10月6日
核兵器廃絶をめざす富山医師医学者の会
代表世話人 佐々 学