今日は、アメリカあるいはブッシュ政権が示す米核戦略の危険性と日本の有事法制との関わりについてお話ししたい。
 昨年出されたァメリヵの核態勢報告(NPR)は、攻撃の対象とされるアメリカの資産は様々であり、それらに対抗するには核兵器の使用を含めた広範な対応が必要だと述べている。これは、アメリカが昨年九月のテロ以降、難後一貫して核兵器を抑止力としてきた従来の方針を、大きく転換したものだ。
 そして、ブッシュ政権の「アメリカ中心主義」が、この核戦略を後押ししている。このアメリカ中心主義は、世界最強の国家であるとの意識と、アメリカが絶対的な善で、対抗する国は全て悪であるとした、善悪二分論から成り立っている。

アメリカの核戦略の危険性とその問題点

 アメリカにとって、目に見えない敵からの脅威は、何をしてくるかがわからない、「お化けのような存在」だと考えるようになっている。相手がわからないため、あらゆる可能性を考え、全てに対応することを考慮した戦略をとっている。
 唯一の超大国であるという自負の一方で、いつ、どこで襲われるかもわからない恐怖に脅え、ますます軍備を増強する。このようにアメリカは異常で危険な精神状態にあると言える。

アメリカの政策の脆弱性
 これらの軍事政策は、アメリカの経済が永遠に成長し続けるという前提で計画されているが、現在アメリカはバブル経済による不況に陥っており、このままの規模の軍事予算を続ければ、数年後には大赤字に転化すると予想される。
 また、対外政策に対する国際的な批判が広がってきている。ブッシュ政権は来春のイラク攻撃を公言しているが、ドイツやフランスなどは反対している。もしイラク攻撃が実現しなければ、これを公約とするブッシュ政権はその地位に居続けられなくなるだろう。アメリカは決して万全の態勢にはない。

朝鮮有事と台湾有事を想定した新ガイドライン
 94年ごろ、北朝鮮の核兵器開発疑惑が広がり、アメリカが北朝鮮の核関連施設を先制攻撃するため、日本の基地から攻撃を行なう計画が持ち上がった。 この北朝鮮「核疑惑」の際、アメリカは北朝鮮との戦争をにらみ、日本に有事法制の整備を申し入れてきている。つまりこの時の有事法制とは、日本が攻め入られた際の備えではなく、アメリカが攻め入る際の備えとして用意されようとしていたものである。
 97年に整備された新ガイドラインには、日本に対するゲリラ型攻撃を早期に排除する旨の規定が設けられたが、これは北朝鮮有事を想定した規定であることは明白である。
 また、96年の台湾海峡有事の際もアメリカは日本に有事法制を整備することを打診してきたと思われる。 新ガイドラインには台湾有事の経験から中国と戦争する可能性をにらみ、弾道ミサイル攻撃への対応についても盛り込まれている。

有事法制成立を防ぐ闘いを

 この秋の成立をねらう周辺事態法案など有事三法案は、極東有事への備えはもちろん、アメリカの要求に追随する小泉内閣がィラクへの先制攻撃に間に合わせようとするものであるo
「武力攻撃のおそれ」があれば先制攻撃してもよいとする有事法制の本質は、先に述べたアメリカの軍事戦略に日本を動員させることが目的だ。
 唯一の被爆国である日本は、核の先制使用も辞さないとするアメリカの核戦略に粛々と従うわけにはいかないのである。